怪獣大戦争 <その2 波川>
中でも水野久美は、その後のオレのゴジラ人生に大きな影響を与えたカルトな女優さんである。
今日も下宿の二階では、大家のおばさんにぼやかれながらも発明マニアの鳥居哲男が、一向に買い手の着かない小型護身器「レディ・ガード」の改良に余念がない。この護身器を作動させれば横丁からでも神経がキリキリするような警報音が聞こえ、大家のおばさんの赤ん坊も夜眠らなくなってしまうというとんでもないシロモノである。そこへ1本の電話が入る。 なんと電話の相手は、レディ・ガードの権利を5000万円で買い取りたいというのだ。恋人でもあり、連合宇宙局に勤める富士ハルノと共に待ち合わせ場所のラウンジで待っていると、そこに現れたのは世界教育社の波川というミステリアスな美女であった。
東宝の女優さんのなかでも、水野久美にはやはり特別な思い入れがある。
それはやはり「怪獣大戦争」での波川が、当時のオレに強烈なインパクトを与えたからだろう。オレが年上の女性を好むようになった原因には、彼女との出会いが少なからず影響しているような気がする(^^;)。
水野久美はやはり悪女役が良く似合う。日本ホラー映画の大傑作「マタンゴ」の麻美と、波川はその代表だろう。
「妖星ゴラス」の野村滝子や、「南海の大決闘」でのダヨの健康的なお色気も良いのだけれど、退廃的で妖艶な役柄は彼女の真骨頂ではないだろうか(^^;)。 とはいえ、そうした妖艶さと清純さが不思議に同居しているキャラクターこそが、東宝特撮映画における彼女の一番の魅力だともいえるのだが(^^)。
波川とグレンのメロドラマは、子供向け怪獣映画の枠を大きくはみ出して、当時のオレたちに大人の世界を垣間見させてくれた。颯爽とオープンカーを運転する波川のカッコよさ。X星人のコスチュームに身を包んだ波川の妖艶さ。そして電子計算機の計算からはみ出してしまった波川の哀しい最期・・・。水野久美が熱演した波川はとても魅力的な「怪獣大戦争」の陰の主役だった。
<続く>