記憶に残る日本人女性ロッカーvol.2 戸川純
そんな玉石混交の中にあって衝撃的だったのが「蛹化の女」(むしのおんな)のPVだった。
初めて戸川純を知ったのは有名なTOTOウォシュレットのCM。面白い女だと思った。
役者の傍らゲルニカ、ヤプーズと音楽活動を重ね、名アルバム「玉姫様」でソロ活動を開始。
「蛹化の女」はこのアルバムの最後に収録されている。
バッヘルベルのカノンに乗せて唄われる奇妙な歌詞は、まるで日野日出志の漫画の世界を彷彿とさせるようなグロテスクなムードを醸し出し、戸川の拙い歌唱とあいまって退廃の極みを感じさせる耽美な作品に仕上がっていた。
この唄には、激しいパンクバージョンもあるのだが、やはりこのクラシックバージョンのほうが衝撃度は高い。
ニナ・ハーゲンやスージー&ザ・バンシーズのスージー・スー、スロッビン・グリッスルのコージー・ファニ・トゥッティ、スリッツといった前衛的な女性ロッカー達が脚光を浴びていた当時、戸川純はロックの表現者として、この日本で抜きん出た個性を発揮していた。世間的には女優としての評価のほうが高いのかもしれないが、オレにとって戸川純はやはり数少ないホンモノの日本人女性ロッカーなのだ。