MINGUS / JONI MITCHELL
まぁそれはいいとして、だいたいオレはアーティスト然としたミュージシャンは苦手なんよ。これまで取り上げたミュージシャンたちを思い起こしてもらいたい。
女性でもスージー・クアトロ、デボラ・ハリーといった具合にどちらかというとチープな大道芸人っぽい雰囲気を持った人に愛情を抱いとる人間なんよ。
しかし、この人は別格。どこか近寄りがたい雰囲気を漂わすこのジョニ・ミッチェルが紡ぎだす音楽はまさに「ART」、いや、そういったカテゴリーを超越した感性の音やね。
この「MINGUS」(1979年)を聴いた時はショックやったねぇ。彼女には「青春の光と影」とかのフォークシンガーとしてのイメージしか無かったんで、唖然とした。
このアルバムは当初、ジャズの巨匠チャールス・ミンガスとの共作になるはずやったのが、彼の急逝でミンガスへの追悼アルバムになったしもうたらしい。
そういう特異さもあるのか、このアルバムの曲は不思議な統一感でまとめられとる。特筆すべきは、やはりジャコ・パストリアスの幽玄なベースサウンドやろう。それに被さるジョニ・ミッチェルの透明感のあるギターストロークが緊張感を生み出す。この対比が絶妙なんやね。そしてどこまでも伸びるハイトーンのヴォーカル。実はこれを初めて聴いたのは真夜中の車の中だったんやけど、ほんとに鳥肌が立った。
他にもウエイン・ショーターやハービー・ハンコックといった一流ミュージシャンも脇を固めとる。
(ラストの「グッドバイ・ポーク・パイ・ハット」はジェフ・ベックも「Wired」の中でプレイしとるミンガスの名曲。)
ジャズでもフォークでもない、まるで”音で絵を描くような感じ”と言ったほうがいいやろう。極上の音楽がここにある!(ちなみに、このジャケットの絵もジョニ自身の手によるもの)
オレが女性ミュージシャンのアルバムで1枚選べと言われたらこれやね。