JEFF BECK GROUP / JEFF BECK GROUP
ジェフ・ベックのアルバムでどれか1枚を、と言われれば迷わずこの「JEFF BECK GROUP」(1972年)を挙げる。
フュージョンとかクロスオーバーなんちゅう音楽ジャンルが注目されだした頃、あのジョージ・マーティンのプロデュースで名作「BLOW BY BLOW 」(1975年)を発表。一般的にはこれが最高作っちゅうことになっとるんやけど、実はこの「オレンジ」(オレンジっちゅうのはこのアルバムの通称)で既に「BLOW BY BLOW」の原型が出来あがっとる。そういう意味でも恐ろしく先鋭的なアルバムだ。
プロデューサーは、ブッカーT&MG'sのギタリストでもあり、有能なソングライターでもあるスティーヴ・クロッパー。その貢献度は思いのほか大きく、アルバムを通して流れているソウルテイストや、ファンキーなリズムがジェフの圧倒的なテクニックと絶妙なアンサンブルを奏でとる。
ボブ・テンチの粘っこいヴォーカルと、コージー・パウエルのタイトで切れの良いドラミングもこのアルバムの大きな魅力やろうね。もちろんレコーディングはクロッパーのお膝元、メンフィスのTMIスタジオ。
曲もディランの「Tonight I'll Be Staying Here With You (今宵はきみと)」、スティービー・ワンダーの「 I Got to Have a Song 」、そしてオレの思い出のあの曲、ダイアナ・ロスの「I Can't Give Back the Love I Feel for You (帰らぬ愛)」といったカヴァー曲と、ジェフのオリジナルナンバーが見事なマッチングを見せている。中でもラストに収められとる珠玉のオリジナル・インストゥルメント「Definitely Maybe」で涙したベックファンは星の数ほどいることだろう(笑)。
ジェフ・ベックのギターには常にドライヴ感がある。それはロックンロールでもブルーズでもジャズでも、どんなスタイルを選ぼうとも一貫しとる。もちろん彼自身が無類の車好きっちゅうことも影響しとるやろうけど(笑)、やはり天賦の才能やね。全く予想できないような、斬新なフレーズが次から次へと湧き出してくるんやから・・・。
ソウル、ジャズ、ファンクといったちょっと黒っぽい雰囲気とロックのパワーが交じり合った極上の音楽がこの1枚にぎっしり詰まっとる凄いアルバムよ。
ジェフ・ベックは1944年の生まれっちゅうから、今年63歳。最近の彼の音はほとんど聴いとらんけど、相変わらずギターと車いじりに明け暮れとるような気がする。