夏休みゴジラ祭り! モスラ対ゴジラ
前作「キングコング対ゴジラ」が空前の大ヒットとなった東宝が次のゴジラの対戦相手に抜擢したのは、こちらも1961年に公開されて大人気となったモスラである。ゴジラと同じく核実験に翻弄されたインファント島の守護神モスラとの死闘は、観る者に何とも知れぬ無常観をも喚起させる。第一作「ゴジラ」を別格とすれば、三番目に好きな作品だ。尚、この作品は「ゴジラ」(1954年)公開から10年目という事で、怪獣映画誕生10周年作品として制作された。
この作品に登場するゴジラはモスゴジと呼ばれ、これ以降に登場するゴジラの原型ともいえる非常に完成されたフォルムを持っている。初代ゴジラが持つ幽玄さでもなく、キンゴジが持つコミカルさでもない、まさに怪獣としての凶暴性を強調した三白眼とバランスの良い肢体から生み出される精悍さが、人気役者としてのゴジラのイメージにピッタリなのだ。かくいうオレも子供の頃はずっとゴジラといえば常にこのモスゴジをイメージしていた。というのも小1の時に初めて観たゴジラ映画「地球最大の決戦」や、その次の「怪獣大戦争」に登場するゴジラのスーツは実はこのモスゴジスーツの使いまわしだったのだから(笑)。
ゴジラヒロインといえば水野久美というイメージが強いけど、この作品がゴジラ映画初出演となる星由里子のゴジラ映画に対する貢献度は非常に高いと思う。この「モスラ対ゴジラ」での溌剌とした駆け出しの女性カメラマン・中西純子役は非常に印象深い。「ゴジラ」以来ゴジラ二作目の出演となる宝田明もかすんでしまうほどの熱演だ。
ここで考えさせられるのがドラマ部分での役者さんの演技の本気度である。本多監督自身「特撮映画が好きな役者にだけ出てもらった」と述べているほど、彼の作品では役者に本気度を求めているし、全ての役者さんたちも(しかも、トップクラスの俳優陣が)、作品に全力を傾注していることだ。
ところがゴジラ映画後期の作品になると(特に平成VSシリーズ)、役者がゴジラ映画を舐めてかかっているような作品も散見される。これでは、観客の心を打つことは到底不可能である。役者に力量が無いのか、監督の姿勢に問題があるのか。役者たちの本気度の低下もゴジラ映画衰退の一因ではなかっただろうか。
田島義文は、オレの大好きな役者さんである。「空の大怪獣ラドン」以来、本多作品には欠かせない名優だが、前年公開の名作「海底軍艦」の天野兵曹や「ウルトラQ」での関デスクは特に印象深い。
そんな田島義文の魅力が堪能できるのもこの「モスラ対ゴジラ」の楽しみの一つである。狡猾で節操がなく、しかもどこか間の抜けたハッピー興行社の熊山はこの作品の重要な役回りである。中盤ではヤクザ映画かと見紛うばかりに陰の実力者・虎畑と血みどろの殺し合いを演じる。この役を演じきれるのはやはりこの人しかあるまい。
いいなぁ、このしらじらしい表情!(笑)
というわけで、秀逸なデザインのゴジラとモスラの死闘。そして個性的な俳優陣の熱演が見事に融合したゴジラ映画黄金期の傑作である。
モスラ対ゴジラ (1964年4月29日公開) カラー作品
制作 / 田中友幸
監督 / 本多猪四郎
特技監督 / 円谷英二
脚本 / 関沢新一
音楽 / 伊福部昭
出演 / 宝田明、星由里子、小泉博、田島義文、藤木悠、佐原健二、ザ・ピーナッツ