ザ・ゴールデン・カップス・アルバム
1966年、当時横浜の二大人気バンドだったスフィンクスのヴォーカリスト・平尾時宗(デイヴ平尾)と、ファナティクスでギターを弾いていた藩広源(エディ藩)は相前後して渡米し、ヤードバーズやゼムなどのステージを目の当たりにして大いに刺激を受け、帰国後、加部正義(ルイズルイス加部)や三枝守(マモル・マヌー)、ケネス伊東らを集めて結成したバンドが平尾時宗とグループ・アンド・アイ、後のザ・ゴールデン・カップスである。
デイヴ平尾追悼の意味も込めて、日本初の本格ロックバンドであったザ・ゴールデン・カップスのアルバムを順次オレなりにご紹介していきたいと思う。
というわけで、1968年に発売されたファーストアルバム「ザ・ゴールデン・カップス・アルバム」から。
(写真↓は「24bitリマスター・紙ジャケット 必聴名盤シリーズ」の表・裏・中ジャケット)
ビートルズにしろストーンズにしろアニマルズにしろ、そのデヴューアルバムの曲構成はオリジナルとカヴァーの入り混じったスタイルだった。「ザ・ゴールデン・カップス・アルバム」にはR&Bやソウルなどのカヴァーが8曲、メンバーによるオリジナルが2曲、これに職業作家による作品3曲を加えた全13曲が収録されている。
圧巻は「I GOT MY MOJO WORKING」「HEY JOE」の2曲。
「I GOT MY MOJO WORKING」は、ポール・バターフィールド・ブルース・バンドが1966年のデヴューアルバムの中でカヴァーしていた泥臭いブルースナンバーだが、カップスは完全に自分たちのオリジナルとして昇華させている。これが凄い。エディー藩のファズを目いっぱい利かせたギターがなんとも不良っぽくてたまらない。
「HEY JOE」は何といってもそのアナーキーさにおいて早すぎたパンクロックと言い切ってしまっても差し支えあるまい。
特にルイズルイス加部の思考回路がショートしてしまったような超絶リードベースは必聴。この時期のカップスサウンドが既にオリジナルな音として完成されていたのが如実にうかがい知れる名演だ。この2曲が収録されているだけでも、このデビューアルバムは他のグループサウンズの連中や、その後続々登場する日本のロックバンドのそれとは一線も二線も画する圧倒的な危ない輝きを放っている。
「青い影」は、映画「ワンモアタイム」のラストでミッキー吉野が味のあるヴァージョンを披露していたが、デイヴ平尾のこのヴァージョンはやはり格別である。もう今では涙無くしては聴けなくなってしまったな。そして「マイ・ガール」や「I FEEL GOOD」のようなナンバーを聴くにつけ、本当にデイヴの歌唱力がいかに素晴らしかったかを思い知らされる。
マモル・マヌーの伸びやかな「アンチェインド・メロディ」、ケネス伊東のオリジナルナンンバー「LSDブルース」などメンバー全員の意気込みが随所に感じられるデヴューアルバムだが、なかにし礼や鈴木邦彦、橋本淳といった当時のGSには欠かせない職業作家たちの作品も、今ではやはりゴールデン・カップスというバンドの大きな魅力となっているのは間違いない。特に「銀色のグラス」や「陽はまた昇る」は巷で "ガレージ歌謡パンク" などと称されるようにスピード感と哀愁が混在する佳作である。(「銀色のグラス」での加部のベースがこれまた凄い!)
戦後、基地の街として歩き出した横浜・本牧は、死と隣合わせの米兵達と地元の若い連中が夜な夜な刹那的な快楽を求めて通りに溢れ、常に危険な香りを漂わせていたという。
そんな喧騒と倦怠の中で音を磨いていったザ・ゴールデン・カップスがどうしようもなくロックなのは、やはり必然なのである。
ザ・ゴールデン・カップス・アルバム 1968.3.10
SIDE A
1. いとしのジザベル (JEZABEL)
2. 青い影 (A WHITER SHEDE OF PALE)
3. モジョ・ワーキング (I GOT MY MOJO WORKING)
4. アンチェインド・メロディー (UNCHAINED MELODY)
5. 恋のあやつり人形 (I'M YOUR PUPPET)
6. ヘイ・ジョー (HEY JOE)
SIDE B
1. 銀色のグラス (LOVE IS MY LIFE)
2. マイ・ガール (MY GIRL)
3. アイ・フィール・グッド (I FEEL GOOD ~ I get you)
4. サーチン・フォー・マイ・ラヴ (SEARCHIN' FOR MY LOVE)
5. LSDブルース (LSD BLUES)
6. ドゥ・ユー・ノー・アイ・ラヴ・ユー (DO YOU KNOW I LOVE YOU)
7. 陽はまた昇る