クローバーフィールド HAKAISHA
あまり乗り気では無かったのだが、話題の怪獣映画ということで本日鑑賞した。
映画に限った事ではないが、10人が観れば10の感想が出てくるのは当然だし、この記事もそうした1つだと思って読んで下さい。結論から言えば、「やっぱ観なけりゃ良かった。」というのが正直な感想。これはそういう一観客の怒りの鑑賞後記なのである(笑)。だって金払ったんだもん。(以下、読みたい方だけお読み下さい。)
公開前はネット上に様々な不確かな情報が小出しにバラ撒かれ、その情報に客は煽られ、ますます期待が高まるという構図。それが今どきのプロモーションとして斬新な手法にも思えたが、それも肝心の本編が優れたものでなければ、逆にあざとさを印象づけるだけである。第一、そうしたプロモーション無しには成立しない映画というものは果たしてまっとうな映画と呼べるのだろうか?
ストーリーらしいものは皆無といっていいだろう。登場人物が撮影するハンディカメラに写った謎の巨大生物による破壊活動と、突然降って涌いた大災害に右往左往する人々の様が延々と映し出されるのだ。その登場人物にしても特に誰が誰であっても全く支障は無いといったもの。とても脚本などと呼べるものではない。
まず、その前評判で散々宣伝されたハンディカメラで撮影したようなブレまくる映像。明らかに9.11同時多発テロのニュース映像を意識したものだ。はじめの20分くらいまでは我慢して観ていたが、それ以降はただただ鬱陶しいだけ。そもそも、これほど観客に苦痛を強いる映像に一体どれだけの意味があるのか。怪獣映画にドキュメンタリーのような「リアル」さを追求した結果がこれだったと言うのならば、それはあまりにも屈折した発想と言わざるを得ない。
次に登場人物の目線で描かれるその映像世界だが、これも最初から最後までこの目線だけなんだな。
オレはかねがね怪獣映画には、リアルさと人間側からの目線は不可欠だと思っているが、この映画のように、未曾有の災害にただ右往左往する一般人の目線だけで構成された映像がこんなにも退屈なものかということを今回初めて思い知らされた。
そして、劇中には映像としてほとんど登場しないけど、このモンスターの魅力の無さ。旧来のハリウッド製モンスターデザインから一歩も踏み出していない。まぁこの映画はモンスターそのものに重きを置いた作品ではないので、こんなものだと言われればそれまでなのだが、「HAKAISHA」と呼ぶにはあまりにもお粗末な印象。
もちろんハンディカメラで撮影したような粗雑な映像も、そのセットや特撮には相当の予算がさりげなく割かれているのは一見して分かる。しかし、これが新しい怪獣映画の方向性だいうのならば何とも殺伐としたものを感じる。
怪獣映画は自由な発想で色んなタイプの作品を作ってもらいたいと本当に思う。
しかし「クローバーフィールド」のエンドロールに流れる伊福部音楽を模したようなエンディング・テーマ(でもこれは意外と良かったのよね・・・笑)を聴き終えて、オレは制作者全員の壮大なマスターベーションを眼前で見せつけられた様な嫌悪感を味わいながら劇場を後にしたのだった。